このエリアは、都会と違い日常生活に自家用車やバスが欠かせません。でも、少し前までの日常生活に自家用車が無いのは当たり前。旅人や住民たちが集う駅が生活の重要な拠点でした。月日は流れ、車無しの生活が想像できない今、改めて、市町村の駅に立ち寄ってみようと思います。駅から眺める風景からその街(集落)の歴史や在り様が見えるかもしれません。
第1回目はJR占冠(しむかっぷ)駅。所在地は北海道勇払(ゆうふつ)郡占冠村字占冠です。所属路線は石勝(せきしょう)線。占冠村が業務を行う簡易委託駅で特急列車しか停まりません。開駅したのが、1981年(昭和56年)10月1日。
村の中心街から離れているので、駅前はとても静かです。改札口を出ると、目の前は山並み。 人はあまりいない様子です。右手に物産館がありました。お昼時で、2階 のレストランを利用するため、車が停まっていました。このレストランは、観光パンフレットに「占冠村を味わえるお店」とあり、特産品の山菜や鹿肉を使ったメニューが充実。村人たちの食堂としても人気です。レストランと同じフロワーに資料館がありました。昔の機能的な生活用品のほか、自生する樹木の見本木やノコギリ、馬具などが展示されていました。村の総面積の94%が森林の占冠の歴史を、列車や送迎車などの待ち時間の合間に面白い展示室でした。
さて、村について少し解説します。占冠の名前はアイヌ語から由来します。諸説あるそうですが、村のホームページでは、「シモカプ」=「とても静かな上流の場所を意味する」説が採用されていました。「シメカップ」と村名を読み間違える人がいるのは、当て字の漢字の影響でしょうか。村は、東京都23区とほぼ同じ大きさの総面積で94%が山林です。人口は1,223人('13年8月末)の過疎地。けれど、アクセスの充実ぶりはたいしたもの。新千歳空港駅からJRで約75分(※)、札幌から自動車で約100分の便利さです。「国際会議」や「第5回太平洋・ 島サミット」が開かれるほどです。 しかし、山間地の村であり、人口が少なく超高齢化の過疎地であることに違いはなく、経済的にも厳しい状況なので、村を上げて移住促進など様々な政策が行われています。また、占冠は、ふらびズムエリアでも屈指の厳寒地です。冬、その日の日本一寒い気温を記録することが時々あります。しかし、住民や占冠ファンは、なんのその。厳寒の地での寒さ対策や雪と氷のイベントや自然が創り出す美しい風景に暮しの楽しみを見つけ村の生活を満喫しているようです。再び駅の話題に戻ると、占冠駅の他に村にはトマム駅があります。こちらも特急のみの停車で無人駅です。そして、村最大のリゾート施設「星野リゾートトマム」のすぐ近くにあります。日本で特急列車の停車駅が2つある村は、占冠村だけらしいそうです。都会と近い大自然の村…。静かな駅を見ながらそんな思いが去来しました。
※2013年9月25日現在、南千歳駅で特急列車に乗り換えた場合で算出。ダイヤ改正、接続などにより所要時間が前後する場合あり。
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